接客業は卒業したよ! あけすけビッチかんどー日記!

接客業歴15年のかんどーが綴る、あけすけな日記。人生はチキンレースです。一歩引いた方が負け。たまに小説を書きます。お問い合わせはsaori0118ai2あっとまーくやふーめーるまで。

携帯ショップでやりたくない仕事

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こんにちは。貫洞です。


携帯ショップで、これだけはつらいという仕事があります。それは、死亡解約です。


その名の通り、契約者の方が亡くなってしまった場合、死亡診断書などを持ってきて解約をすると、解約手数料(3,000円~9,500円)が免除され、その場で即解約できるというものです。


わたしはカウンターで直接手続きを受けることは少ないですが、ご用件を聞いたときにこれを言われると、頭をガツンと殴られたような気持ちになります。接客業としては、常に仮面をつけて感情を超えたところで動かなきゃいけないんだけど、これだけはほんとにダメ。感情が伝播してきてしまう。


特に、小さな子どもを連れた若いお父さん、お母さんが子どもの手を引いてお店へやってきて、「妻が…」「主人が…」とこの手続きを言われた瞬間がダメです。情けないんですが、完全に自分を重ねてしまいます。「残された者」として生きている生身の人間に対し、お客様という以上の感情を持ってしまう。特にそれが道半ばの若い方の死だと知ると、正直つらい。



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ある日、携帯の操作を聞きに来た親子がいました。


カウンターが空いていたから、座ってやりましょう、と誘導して親御さんの携帯の操作案内を開始。その間、子どもはとてもおとなしかった。内容自体は仕組みがわかってしまえば簡単なことだったのですぐに終わりました。そこからわたしはお客様に商品提案をするのが常です。たまたま古い機種を使っているお客様だったので、「もしよろしければ、今より安く最新機種が使えますよ」と定番のことばを口にしました。


すると、親御さんはちょっと困った様子で、「これは思い出の携帯だから、もう少しだけ使いたいんです」と言われました。わたしが一瞬ぽかんとしてしまったのを見て、親御さんはご自身の身に起こったことをわたしに話してくれました。内容はここには書けませんが、察していただけるかと思います。

 

接客中に泣いてしまったのはこの時一度きりです。とても静かに接客していたので、他のスタッフさんには気づかれなかったと思います。





携帯の使い方に詳しいつもりでいても、一緒に過ごした思い出を丸ごとバックアップを取る方法なんて提案できません。「大丈夫ですよ! 機種変更しましょう」なんて言えるわけないです。



親御さんは優しい目で子どもと目を合わせて、思い出話をひとつしました。子どもの目はただまっすぐに、親御さんをみつめていました。親子の強い絆。あのときわたしは「子どもが欲しい」そんなふうに思いました。




少し世間話をしてその接客は終わりましたが、しばらくあまり動けませんでした。日常のすぐそばにある、大きな悲しみ。一見そうは見えない人が背負っているもの。そういうさまざまなものが、心の中に渦巻いてしまったんです。






わたしは、夫とは年の差婚です。諸々鑑みると、わたしの方が20年くらい、長生きすることになります。夫を失った後の20年、わたしは生きていけるだろうか? 

さびしさを埋めるために子どもが欲しいなんてダメかもしれない。そもそも気分のムラが激しいわたしに子どもは無理かもしれない。チャンスがあるとしたら、あとせいぜい1~2年。


夫の体調はやっぱり不安定です。近々再度人間ドックを受けます。人間の体が想像よりもずっと脆いものであることに、夫が気づかせてくれました。




いつか、わたしも夫の携帯をにぎりしめて携帯ショップを訪れ、それを解約する日が来るのだろうか。

 

こればかりはショップに行きたくないな。お金うんぬんじゃなく、しばらく解約できない気がする。その回線が無くなることがものすごく悲しい。愛する人の名前が二度とこの液晶に出てこないと思うと涙が出る。誰も使わなくても、その電番はわたしが死ぬまで持っていたい。使っていた機種もそのまま持って、時々自分の携帯に着信を入れるだろう。何時に帰るね、なんてメールを自分で打つだろう。きっと部屋もそのままにして、すべての時を止めるだろう。夫がそこにいるかのように振る舞うだろう。そしてたまに真実と向き合って大泣きするんだろう。そのときににぎりしめられるもののひとつとして、携帯も、そのままにしておきたい。

 

 

何の神様でもいい。どうかわたしから夫を奪わないでほしい。もしそれを叶えてくれるのなら、これから先どんな苦境も乗り越えるし、どんな苦難があっても食いしばって耐え抜いてみせる。これはわたしの心からの、願いだ。

 






急がせるお客よりも、クレームよりも、死亡解約がつらい。

携帯ショップで働く者のちょっとした本音でした。



それじゃあ、また明日!


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