接客業は卒業したよ! あけすけビッチかんどー日記!

接客業歴15年のかんどーが綴る、あけすけな日記。人生はチキンレースです。一歩引いた方が負け。たまに小説を書きます。お問い合わせはsaori0118ai2あっとまーくやふーめーるまで。

世界で一番美しい一人暮らし

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日本での私のごちそう。

……ってほどでもないんだけど、なつかしいごはん。私が27歳~30歳までの間、門前仲町の部屋に住んで、部屋に何も置かず常に無音状態にして、静謐な心で食べていたごはんがこれ。

納豆卵かけごはん。


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まず卵1個を割り、よく混ぜておく。そして納豆をやはりよく混ぜ、辛子と添付のタレを入れてさらに混ぜる。混ぜ終えた納豆を卵の容器に入れ、醤油を少々加えて泡立てるように混ぜる。

それを熱々のごはんの上にかけて食べる。

飲み物は必ず緑茶。


これの何が良いって、お腹が張らないんですよ。ごはんの量は少なめのお茶碗一杯にしているので、その場の空腹はちゃんと満たされるのに、食べてすぐ動けるんです。そして地味に体に良いらしく、一日二食これを食べていると風邪もひきません。栄養バランスがすごく良いんだろうね。あとは私の「復活食」なんだよこれ。


アルコール依存症で肝臓メチャクチャになって、食べ物もメチャクチャになってしまった私は、もう何を食べていいのかわからなくなってた。豚汁ばっかり作って食べてた時期もあったし。(あれはあれで美味しくて体に良かった)

野菜たっぷりのミネストローネスープばかり作っていたときもあった。

豆腐ばっかり食べてる時期もあった。


だけど全部、「毎日続けられる」気がしなかったんだよ。絶対飽きるし絶対他のものも食べたくなるメニューだった。その「他のもの」にロクなものを選ばないことが自分でわかっていたから、毎日が憂鬱だった。

それがある日、かなりたちのわるい風邪をひいたときに「納豆が体にいいよ」と誰かに言われて納豆を買ってきた。最初は納豆だけをごはんにかけて食べたんだけど、イマイチ美味しくなくて、もっと汁気のあるたべものにできないかと考えた。納豆茶漬けとか、アホみたいだけど試したよ。あんまり美味しくなかったけどw

それで私、卵かけごはん大好きだったから、納豆と混ぜてみたらよくないか? と思ってやってみたんだよね。そしたら想像以上に美味しかった。

卵は6個入りのちょっと美味しいやつを買った。納豆は3パック100円のやつを買った。ごはんは炊いて冷凍しておいた。一食200gくらいの少な目ごはんにした。そのくらいの方が納豆と卵の量にマッチする。


私はこれを常食した。


朝起きてお腹がすいていたらこれを食べてから読書。午後は散歩がてら深川不動尊を参拝し、参道を歩いたりドラッグストアを冷やかしたりして、足りないものがあるときだけ買い物をして帰宅する。気が向くとドトールに入ってコーヒーかアイスコーヒーを飲む。お腹がすいていればドトールでミラノサンドを食べることもあった。そんな時も必ず本を読んでいた。ずっとずっと私は小説の世界に入り浸っていた。

誰の視線も気にすることなく一人で門前仲町の生活を楽しみ、広々としたドトールでのひとときを楽しみ、小さな入り口から部屋に入った。そこはtiny roomと言って良い素晴らしい小さな部屋だった。入り口もよく見なければわからないくらい小さいし、部屋も全体的に小さかった。間取りは1DKだったけど、すべてが小さいのだ。トイレも小さい。洗面所も小さい。キッチンは小さめだけどうまく使えば料理できたからいろいろ作っていた。


散歩から帰ってきて、また本を読んだ。夕暮れが一日の終わりを告げるころ、お腹がすいていればまた納豆卵かけご飯を食べた。食べ終えて1時間ほど休んでからランニングに出た。ランニングは1時間みっちり走った。走り終えるとシャワーを浴び、常温のおいしいミネラルウォーターをたっぷり飲み、ストレッチをしてそのままベッドに入った。文庫本を「どこまで読んだっけ」と確認しているうちに眠気がおとずれる。そうしてコトンと音を立てて私は深い深い眠りの中へ落ちていくのであった。


毎日1時間のランニングのおかげで、本を読むだけの生活だったが太ることはなかった。質素倹約、質実剛健、静謐な部屋に心穏やかな自分が住まうという美しさを私は手に入れていた。あれ以上美しい一人暮らしを私は知らない。


今でも私はあの頃の私が好きだ。余計なものを一切置かない部屋で2~3冊だけおいてある文庫本を数日で読み切ってまた新しく買いに行くあの生活が好きだ。月に一度神保町に古書を買い求めに行っていた自分が好きだ。どこかおかしかったのだとは思うが、食生活と毎日のランニングが非常に良かったらしく、ぎりぎりのところで私は人間としてうつくしい形のままでいることができた。


納豆卵かけご飯は、そんな私の世界一美しい一人暮らしを彩ってくれた不思議な食べ物だ。私は実は人と食事するときに納豆も卵も特に意識して食べない。あれば食べるかもしれないが、特に静謐な気持ちにはならない。あれは家で一人で納豆卵かけごはんにするから美味しいのであって、外食で食べたいとは一切思わない。質素な一人暮らしの部屋にあるからこそあのメニューは輝くのである。家族の食卓に納豆と卵があっても何とも思わない。ああ、納豆と卵ですねとしか思わない。

一人暮らしで、それしか食べないという信念のような意志のような、そしてそこに人生賭けているというとてもあやういバランスで保たれたあの生活の中にある納豆卵かけご飯が、尊いのだ。


私は今日もめんどうくさく生きている。


私と真正面から向き合うのは非常に疲れるらしい。理由はわからない。それならそれで、私と一緒にいるのを週の半分とか週3日とかにすればいいと思う。私は残りの4日、あの門前仲町の日々を思い出し、あの生活をしてみようと思う。(今は仕事があるから食事と部屋をきれいにすることしか再現できないが)

また新しい生活が始まる。

私はイメージしている。あの門前仲町の物件で一人静かに暮らしていた日々を。誰がなんと言おうと、世界で一番美しい一人暮らしをしていたと私は自分のことを誇りに思っている。あの生活から青年海外協力隊へ飛び立ち、そのまま起業し、そして今は人を助けることに生きがいを見出している。

美しい暮らしに、神が降りてきたとしか思えない。

私は新しい暮らしでまた、神様と一緒に暮らしたい。週に3日は愛する人がやってくる。その時は整った部屋と心で、愛する人を幸せにすることに一生懸命になりたい。私はもう、一人ではないのだ。だけど一人の時間もちゃんと愛していきたい。自分を愛せないと人を愛せないのである。


長くなったが、鬱っぽくなったときには、納豆卵かけごはんを一日に2回食べてみてほしい。そしてランニングを一日一時間だ。きっと何かが変わる。人生が変わる。


それじゃあ、また明日。