こんにちは。貫洞です。
わたしはB級グルメが大好きです。海外行ったら屋台だし、日本では焼き鳥が好き。ファーストフードもハマると毎日食べたりします。添加物の類もあまり気にしません。
そんなわたしですが、たまに「ものすごーーーく美味しいモノ」を食べに行きます。後述しますが、これにはいくつかの意味で良いことがあるんです。今日は、とある銀座のお寿司屋さんについて書きます。
お寿司が好きな方には、ぜひこの世界を体感してほしいです。
■銀座のお寿司屋さんに行くチャンス到来!
銀座のお寿司と聞いて、どんなイメージがありますか? 敷居が高い、値段が高い、一見さんお断り、クラブホステスとの同伴やアフターで使うイメージ、一生行くことは無い…
これ全部、わたしが元々銀座のお寿司屋さんに対して持っていたイメージです。
正直、いろいろ面倒くさそうだから行かなくていいやって思ってました。一見扱いをされて嫌な思いもしたくないし。(これが一番大きかった)だから36歳の今まで、高いお寿司を食べに行くことはほとんどありませんでした。
そんなわたしに「銀座の会員制のお寿司屋さん」へ行く機会が到来しました。
夫の友人が「本当にうまい寿司を食べさせるお店がある」という話をしてくれたのです。夫と3人で一緒に行こう、と。わたしは「一見さんに冷たいとか、そういうお店には行きたくない」ということを伝えました。すると「いや、あのお店はそういう感じじゃないね。ただし、合う合わないがあるんだよ」とのこと。興味がわいて話を聞いてみると、店主がものすごいこだわりを持ってお店をやっており、わたしと歳も近いという。一度だけ行ってみようと思って、わたしは行くことにしました。
■初めての銀座のお寿司屋さん…看板がない
そもそも関東に住んでいても、なかなか銀座って行かない。久しぶりの銀座の街を見まわしながら(キャバクラの客引き時代のことを思い出したのは、そういえばこの時だった)、お店へと向かう。夫の友人と合流し、いざお店へ。
ザ・銀座! という感じの高級品を売っているお店の地下にそのお寿司屋さんはあります。地下に降りると、会員制バーなどが並んでいます。そして突き当たりにあるお寿司屋さんに着いたのですが、看板がない。見ようによっては入り口もない。これ壁ですと言われたら「へえ」で終わってしまうくらい入り口がわかりにくい。会員制で、一見客は入れないそうですが、一見客は見つけることもできない…という方が正しいかもしれません。のれんもないんだもんw
隠しドアのような入り口からその世界へ入ると、小さいけれど静謐で、キンと張りつめているのに人を裸にする、そんな空間が広がっていました。6人座れる寿司カウンターなんだけど、着いた段階ではお客はわたしたちだけ。店主と相対する茶室に入ったような気持ちになりました。
「いらっしゃいませ。どうぞ、お好きに座ってください」
わたしと歳が近そうな、でも一筋縄ではいかなそうな、ちょっと強面の店主がやわらかい声で促してくれる。わたしは緊張の面持ちで座りました。まず店主は常連である夫の友人といくつか会話をし、誰々は元気か…などの大人の会話を交わしました。その後、夫とわたしが紹介され、「今日は楽しみにして来ました」のような挨拶と軽い会話。そしていよいよお料理が出てきます。この時点で心臓はバクバク。緊張をほぐすツボってどこだっけ? と手のツボを押したりしてました←
■澄み切った味と仕事に対する刃のような熱意
※店内は写真撮っていい雰囲気じゃないので写真なしです、お料理の順番もうろ覚えです
最初に出てきたお刺身を食べて、この一口ですべての緊張が吹っ飛びました。白身魚(ヒラメ)なんだけど、いろんな味がする。ふつうのお刺身を想像して食べたらびっくりする。目をつぶって、小さく切って口に入れたら、お刺身だってわからないんじゃないかというくらいいろんな味がしすぎて口の中が軽くパニック。雄大な海の中をひらひらと、よく締まった体で泳ぎ回るヒラメの姿が目に浮かびました。
イカやマグロ、カツオも出てきました。実は生臭いからカツオが嫌いだったのですが、ここのカツオは「今までのカツオって何だったんだ…」と思うくらい澄み切った味でした。
茶碗蒸し、小鉢も出されましたが、どれも澄んだ味。店主の噛み含めるような料理の説明も良かった。この頃になると、わたしは店主に質問をしたりしていました。くつろがせる雰囲気を作ってくれていたのです。銀座のお寿司屋さんは感じ悪い、というわたしの固定観念はひっくり返りました。
「緊張解けました?」
と聞いてくる店主。よく見てるなー。もう大丈夫ですと返事。店内はとてもきれい。張りつめているんだけど、けして冷たくない。
ふだんB級グルメのお店でしているノリで、ふつうの会話もできました。旅の話だとか、芸能人の話だとか、そういう話からの店主の話の広げ方が面白くて、思ったことは口に出してました。
■小食のわたしはお寿司が入らず…
お料理がひとしきり出ると、そこからお寿司を握ってもらうのですが、小食の私はなんとここでおなかがいっぱいになってしまっていました…。初めてのお店で、しかもお寿司屋さんでお寿司の前におなかがいっぱいになってしまうとか、なかなかあり得ない話です。店主は一言
「奥さんの分、小さめに握りましょうか?」
と言ってくれました。ニコニコしながら「小さめに握るの、得意なんですよ」とも。お任せして、何貫かいただきました。でもやっぱりおなかがいっぱいで、最後の方はわたしはパスしました。少々気マズかったのですが、店主は
「もう、奥さんがどのくらい食べられるかわかりましたから、次回は大丈夫です。もっと小さめに握って、最後まで食べられるようにしますよ」
と言ってくれました。素直に嬉しかったです。
お寿司の味は、わたしのボキャブラリーでは表現しきれませんが、肉厚で海の中の旨みがすべて詰まった車エビ、はじけるイクラ、サクっという歯ごたえが最高のイカ、そしてご飯は赤酢で炊いてあって、独特の酸味と甘みですべてのネタを絶妙に受け止めてふくらませてくれます。「こんなお寿司食べたことない!」の連続です。好きな人はほんとにこの世界にハマると思います。
■すぐに予約を入れる夫
これ、すごいなと思ったのですが、ひとしきりの会話が終わったときに、夫が「僕またここに来たいんだけど、予約取れます?」と切り出したんです。店主は微笑み「気に入っていただいてありがとうございます。いつが良いですか?」と予約表を取り出します。わたしも「絶対また来たい!」と挙手。行ける日を合わせて、じゃあ○月×日に…と予約を取ってしまいました。
この日、このまま帰ってしまったら次回の予約を取るのは困難だったと思います。そもそも電話番号も公開されていないし。多分夫のこの行動力には、夫の人生が詰まってる。わたしは夫のこういうところが好きなんです。
わたしも会員制のお店を紹介してもらって気に入ったら、その場で予約を入れて帰ろうと思いました。
とても美味しかった、次回もよろしくお願いしますと伝え、紹介してくれた夫の友人にお礼を言ってこの日は終わりました。いつまでも口の中に美味しい味が残って消えない夜でした。(これ本当だよ!)
■2回目の訪問
そうやって訪れた2回目の訪問の日。今度は夫とわたし、別の友人2人の計4人で行きました。
やっぱり最高に美味しいヒラメから始まって、前回と少し違う流れでお寿司の時間へと突入。店主はわたしのお寿司を、ものすごく小さく握ってくれました。わたしの親指、男の人の小指くらいの大きさにキュっと握られたシャリに、バランスを合わせて切ってくれたであろうネタがチョン、と乗っていて、美しくて、いとおしいお寿司。その味は味覚のパラダイス。白身魚、車エビ、前回味わえなかったトロやウニもしっかり頂きました。
食べながら、わたしはずっとある文章を思い出していました。
太宰治「人間失格」の一節です。
もともと、自分は、うまい鮨を食わせる店というところに、ひとに連れられて行って食っても、うまいと思った事は、いちどもありませんでした。大き過ぎるのです。親指くらいの大きさにキチッと握れないものかしら、といつも考えていました。
ああ、ここのお寿司は親指どころか小指くらいの大きさにキチッと握ってあって美味しいよ…と時代を超えた会話を心の中で繰り返していました。そもそも昔のお寿司って、おにぎりみたいに大きかったんだよね。さっとお腹を満たせるファーストフードみたいな感覚だから。それが美食を追求できる時代に入って、一口で食べられる今の形になったんだよなぁ…なんて、お寿司のことを考えていました。
その小さくていとおしい、親指くらいの大きさのお寿司を最後まで食べ、心から満足してその日も帰りました。夫は帰り際に、また次の予約を取っていましたw
■値段
長文になってしまいましたが、ここのお寿司の値段は「2人で5万くらい」です。お酒を飲む人だともっと高いかも。
わたしはこの値段を知っても、このお店に絶対また行きたいと思います。この価格には、おいしいお寿司と、そこに座るある種の快楽のようなものが含まれていると思うからです。
本当においしいお寿司、一度食べたらやみつきになります。ネタとシャリだけでなく、ワサビもガリも海苔も醤油も最後に出てくるお茶も、すべてがおいしいのです。そしてわたしが味以上に楽しいと思うのが、接客です。こだわりの寿司を出し、腕一本で勝負している店主の目の配り方や会話のつなぎ方、人を見るその目、それらすべてのものがわたしの中でキラっと光る人生の道しるべになる感じ。物事への取り組み方に惚れた感があります。
高いとは思うけど、毎月行くわけじゃなし、人生のアクセントとしてこういうお店に行くのはいいなーと思っています。そして、どうせ行くならここまで突き抜けた人が握るお店で食べたい、とも実は思っています。
なんかベタな言葉になっちゃうんだけど、ここのお寿司食べに来られるように仕事頑張ろうとか、素直に思える。多分これは銀座のパワーでもあると思います。銀座、おそるべし。
働きたくない病も治る、お寿司。
■…で、どこなの?
これは紹介してはいけない情報だと思うので、ここに書くのは控えます。知っている方もいるかもしれないので書いておくと、はてなで匿名を表す某苗字の方が握ってくれています。お名前を聞いた瞬間、ちょっと笑ったのは秘密です。はてな民じゃないとわからないネタで一人笑う、銀座の寿司屋って感じです。
今日は珍しく、食べ物について語ってみました。
小食だけど美味しいものは大好きです。美味しいものを美味しく食べさせてくれるお店も大好きです。媚びないけどきっちり人を見ている接客も大好きです。
もし、ちょっと高いお寿司屋さんに行く機会があったら、ぜひ楽しんでほしいと思います。お店との相性もありますが、うまくハマると至福の時を過ごせる場所だと思います。
この話を、お寿司屋さんを紹介してくれた方に話したら「それは、貫洞さんとお店の相性が合ってるんだよ」と言われました。夫婦でたまに銀座へ出かけ、おいしいお寿司をいただくこの生活は、まだしばらく続きそうです。
それじゃあ、また明日!
☆今日の過去記事☆
あんまり食べ物のこと書いてないなあ。これからは、たまに書いてみよう。