苦い思い出を書く。
結婚する前。わたしは外食が苦手だった。なんていうか、常連さんの輪が出来上がっているお店に入るのが嫌だったのだ。お店の人があからさまに一見と常連を差別するような店では、生きた心地がしない。
しかし、会社を立ち上げるにあたり、どうしても外食で接待をしなければならないことが多く、適度にお客と距離を取ってくれつつ、味や感じの良いお店を必死で探した。
当時わたしが住んでいた町が若干閉鎖的だったこともあり、お店選びは難航をきわめた。一回目行った時は良かったが、二回目は常連(町の偉い人)につきっきりでほぼ無視されている状態のこともあり、お金を払ってこんな嫌な思いをするのは嫌だと思った。外食が大嫌いだった。
夜の食事が終わるとホッとした。本当は家でひとりでご飯を食べたかった。好きな時間に、好きなように納豆卵かけごはんが食べたかった。
あるワインバーが、最初感じが良かったので何度か接待に使った。
しかしそのワインバーの店主は気分屋で、仕事にムラがあった。店主が接客をするスタイルなのだが、注文を厨房に通し忘れていることが何度かあった。謝ることもしなければ、少しでもそれを口にすると無視をしてくる。こちらは接待なので気を遣って仕方ない。
でもまあそのくらいなら仕方ないかと思えた。個人経営のお店なんてそんなものだろう。
一度、そのワインバーで食事をした後、帰宅して盛大に嘔吐したことがあった。わたしは牡蠣のアレルギーがあるので、料理に牡蠣が使われていたなら、一時的なアレルギーだ。しかし牡蠣が使われていなかった場合、何らかのウイルスに感染している可能性がある。わたしはお店に電話をして
「すみません、先ほどそちらで食事をしたのですが、今日の料理に牡蠣は入っていなかったでしょうか? アレルギーであることは伝えていましたが、大皿料理もありましたので、教えていただけないでしょうか」
店主はとても不愛想に「使ってません」ガチャ。
まだ店が忙しいのかもしれないが、牡蠣を使っていないことはわかった。あと2時間嘔吐が止まらなかったら病院へ行こうと覚悟を決めた。
幸い、胃の中のものを吐ききったら嘔吐が止まった。
食べ合わせが悪かったとか、そういう問題だったのだと思い、深夜になってしまったがゆっくり眠った。
その翌々日くらい。
わたしは本当にたまたま、そのワインバーのブログを見た。すると、記事にはこんなことが書いてあった。
「来てほしくないお客様」
お店に来てほしいお客様と、来てほしくないお客様がいます。
周りに気遣いができて、楽しくワインを飲んでくださるお客様。
来てほしいです。
来てほしくないお客様。
使っていないと言っているのに、アレルギーがあると電話をしてきて、
牡蠣が入っていないか聞いてくるお客様。
言いがかりはやめてください。
来なくていいです。
明日はワインラバーズの集まりがあります!
皆様来てほしいお客様ばかり!(笑)
そういうお客様しか呼んでおりませんっ!
楽しみ、楽しみ。
何これ。
完全にわたしのことじゃん。一応5回くらいは行ってるんですが、そんなに来てほしくなかったんですかね。それなら予約の電話をした時点で「満席です」と断ってくれればよかった。行った時にもっとわかりやすく態度にあらわしてくれれば良かった。
ブログに書くなんて、最低です。
ほんとはそのブログをここでシェアしたいところなのですが。
残念ながら、そのお店はもうないのです。そのブログ記事をアップした約1年後に、ひっそりとなくなっていました。
実はブログだけはまだ残ってます。読み返したら、文章そのまんま残ってました。刺さる文章は何年経っても人の心に一言一句残るんだね。
わたしは接客業をしています。
相変わらず人の顔が覚えられないけど、スタッフ同士の連携を取ることで情報共有したり、わたしのだめな部分を助けてもらいながら、お客様に楽しく携帯買ってもらえるようにしてる。
「お店に来て良かった」
「寒いけど来て良かったわ!」
「また来るから!」
分け隔てなくみんながそう言ってくれるようにやってる。
そして、当たり前だけどお客様のことをブログになんて書かない。書くとしても最低半年経ってから。フェイク入れまくりで、お客様本人が読んでも自分のことだとわからないように書きます。
あのワインバーが閉店した理由は知らないですが、常連ばかり大事にしていたようです。知人がたまたま行ったときも、常連客にばかりサービスしていて気分が悪かったと言っていました。お店がなくなったのを知って、ああ、やっぱりと思いました。
わたしのブログ継続期間より短い期間で閉店しました。地元の人に愛されるお店を目指していたらしいけど、接客わかってない人特有のミスが目立っていました。もし、接客は他の人に任せていたら違う結果になっていたと思います。
「接客くらい自分でやる」と考えていたのかも知れませんが、甘い。飲食店において、接客は味と同じくらい大事なんです。
あのお店のおかげで外食嫌いに拍車がかかりました。ほんとに何度も行って安心できるお店でしか食事しません。変なお店で高いお金払うなら、家で納豆卵かけごはん食べてたいのです。
食事って、雰囲気大事だよね、というお話でした。
それじゃあ、また明日!
★今日の過去記事★
わたしのベースは「卵かけごはん」です。
体調がよいときに、夫と鉄板焼きを食べに行きます。このお店大好きです。
夫とこのお寿司屋さんでデートするのはまだ続いています。