こんにちは。飛鳥井千砂さんの小説が何よりも大好きな、かんどーです!
待ちわびました...
飛鳥井千砂さんの新作を!! 昨年中、「砂に泳ぐ彼女」が「砂に泳ぐ」とタイトルを変えて文庫化されました。もちろん買って読みましたし、前回読んだ時とは違う感想を得ることができました。しかし、飛鳥井千砂の新刊が読みたい......その思いは消えず。
そしたら!
出ました!!
飛鳥井千砂著「そのバケツでは水がくめない」
帯には「タイニー・タイニー・ハッピーの著者が送る...」という言葉が綴ってありました。タイニー・タイニー・ハッピーは確かに名作でした。しかしもう何年も前の作品です。わたしはどんな作品でもいいから、飛鳥井千砂の書いた新作が読みたくてたまらなかった。
「タニハピ」は確かに名作だけど、飛鳥井千砂という作家をタニハピの明るい枠に閉じ込めてほしくないなあと思いました。むしろ「UNTITLED」や「鏡よ、鏡」や「砂に泳ぐ」の独特のドヨっとしたけだるい人間関係の緻密な描写こそが飛鳥井千砂の読みどころだと思うわけですが……。
話を新刊「そのバケツでは水がくめない」に戻します。
今回の舞台は、アパレル会社です。
新しいブランドを立ち上げるべく奮闘するマーチャンダイザーの女性。そして奮闘する中で出会う、可愛らしいデザイナーの女性。
ふたりの出会いから、物語がスタートします。
正直に言いまして、タイニー・タイニー・ハッピーより暗いです。飛鳥井千砂が、人間をより深く掘り下げる中で、人間の持つ闇に気づかせていきます。謎解き要素を前面に出してこないけど、充分あると思う。緻密な描写がたまりません。
しかしながら、今回の作品でも、タニハピ的な、ワクワク・キラキラする描写が光ります。この対比こそが飛鳥井千砂の醍醐味だと思うんですよね。キラキラした世界の中で渦巻く闇っていうのかな。
気が付くと、目の前に女性が立っていた。ふわり、という音が聞こえた気がした。紺地に黄色の花模様のワンピースの裾をふわり、とさせて、一人の女性が理世の目の前に降り立ったのだ。
こういう登場人物の登場の「させ方」であったり、
突然自分の前に降り立った女性に、理世は見とれた。大事に精巧に作られた、人形のような人だった。陶器のように白い肌。大きくはないが形がよく、バランスの取れた配置の目、鼻、口。肩先で柔らかそうに揺れる、緩くウェーブのかかった焦げ茶色の髪。少女のように細く、華奢な体躯。その触ったら壊れてしまいそうな繊細な体を、あの花柄のワンピースが丁寧に包み込んでいる。この人のために存在しているようなワンピースだ、と思った。
洋服にキラキラした想いが乗っているのと、女性の魅力を同時に描写したり。
これ、かなり序盤の一文です。服飾関係の人なんかは目を輝かせてページをめくるだろうし、働く女性という立場の人も、マーチャンダイザーという職業の主人公に少なからず移入する。
男性も登場するのだけれど、その女性への接し方も千差万別であり、男性が読んでも面白いと思う。むしろ、男性が読んだ感想が聞きたい。
飛鳥井千砂の小説には、働く女性が多く登場します。一人はバリキャリ、もう一人は癖のある人(アーティストとか)という組み合わせが多いかな。
どちらもその人の人生を生きていて、その人の時間軸を誰かと交差しながら、生きてるんです。その切なさがたまらない。
あえて、男女関係はアッサリと描く時が多い気がしますね。むしろ同性間の友情とかモヤモヤしたものを書くのが緻密すぎて面白い。
飛鳥井千砂を応援し続けているファンとして、一気読みして、「やっぱ最高!!」と震えた一作。
ふだん貼らないけどあえて貼りますよ。アマゾンリンク。理由は、置いていない書店もあるからです。駅の中にある小さな書店とかだと無い。大型書店ならあります。
物足りない部分があるかもしれない。純粋なミステリー小説ほど場面転換しないかもしれない。小さな世界かもしれない。
でも、わたしにとって飛鳥井千砂の描く世界はまさにわたしが今生きている日本そのものであり、飛鳥井千砂の描く人物は、ひょっとしたらわたしの身近にいるかもしれない、なんとも現実世界とリンクした物語なのです。
この世界観を、ずっとずっと味わい続けていたい。
この一冊を読みふけっている時間は、ここ最近のわたしにとって何よりも充実した時間でした。一気読みしてしまったのでもう一度読むつもり。
最近は本を読むペースがだいぶ落ちてしまったけれど、やっぱり好きな作家さんの本は読み続けていきたいです。
飛鳥井千砂さんが、これからどんな世界を切り取って見せてくれるのかが、たまらなく楽しみです。ワクワクします。それまで自分も一生懸命生きてようって思えます。
今日は、わたしにとって宝物のような本を紹介しました。
それじゃあ、また明日!