接客業は卒業したよ! あけすけビッチかんどー日記!

接客業歴15年のかんどーが綴る、あけすけな日記。人生はチキンレースです。一歩引いた方が負け。たまに小説を書きます。お問い合わせはsaori0118ai2あっとまーくやふーめーるまで。

独特の味がする蚕のさなぎを食べて、映画「あゝ野麦峠」を観た

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こんにちは。先日、蚕のさなぎを食べた、かんどーです。

 

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蚕のさなぎは独特のにおいがした、と記事に書きましたが、それがどんなにおいなのか、明確に表現できていない自分が悔しかったです。

少し付け足すと、鼻に抜ける独特の植物臭があるんです。これが、ただ青臭いだけでなく、なんていうか化学物質っぽいんですよ。自然のものを食べているのに、なぜか合成臭に近いにおい。これがわたしの感じた違和感でした。

全然似てないかもしれませんが、きな粉のにおいと八つ橋のにおいがまざった感じ、あの匂いにも系統として似ているところがあります。ただしもっときついです。ハッカの元のようなにおいともいえます。好きな人は好きというのも納得できます。


このにおいの元、当たり前ですがブロイラーのように薬を与えて育てた蚕だとか、そういうものではないです。桑の葉…というところにポイントがあるのではないかと思いました。このにおいを他の人はどう思っているのか、ネットで検索するも、ドンピシャ「これ!」という表現をしている人はまだいませんでした。このにおいを的確に表現することは、今年のわたしたちの任務になるのかもしれません。



☆☆☆


蚕は、少し昔、絹糸を作るために「養蚕」されていました。当時、製糸は日本の一大産業だったそうです。そのあたりのことを理解していなかったので、映画「あゝ野麦峠」を視聴。

 

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その名のとおり、飛騨(岐阜)の少女たちが、一家の貧しい暮らしを支えるため、12歳、13歳という若さで寒い冬に野麦峠を越え、信州(長野)にある製紙場へ出稼ぎに行くお話です。


極寒雪降りしきる野麦峠を、まだ年若い少女たちが製糸場で働くために命を懸けて越えていく。一度この峠を越えたら、次のお正月まで帰ってはこられません。1年間働きづめの生活が待っているのです。


製糸工場の朝は早く、食事は「工女の早飯」と言われるように10分程度でかきこみ、トイレのドアをノックして「早くしてぇ!」と叫び、また糸をひく仕事に戻り、夜遅くまで休みなく働くという過酷なものでした。

それでも、生糸の市場が高騰している時期などはまだ良かったようです。最低限の労働環境は守られていた。しかし、生糸の価格が暴落し、海外との取引が途絶えたときなどは、彼女たちを無理に働かせ、安値でも国内で売り捌き、工場を存続させようとする涙ぐましい努力、そして工女たちの血のにじむ努力が描かれていました。


1日14時間は働いていたのでしょう。



さて、この映画の中でわたしが観たかったのは、蚕のにおいについての描写です。彼女たちは、さなぎをお湯でゆでて糸をひき、糸巻きに巻き付けるところまでしているようでした。(この出来不出来にはかなりの差があり、上手に糸をひける工女は百円工女と呼ばれ、特別ボーナスが出たりしていた模様)


映画の中では、初日、工場に入ったとたん、その独特のにおいに耐え切れず吐いてしまう見習い工女がいました。それを見て管理職のおかみさんが、

「さなぎのにおいがダメで、工女が務まるか!」

と怒鳴りつけ、蚕のさなぎを見習い工女の口元に押しつける場面がありました。見習い工女は何度も思い切り吐き、最後には気を失いました。翌日から働いていましたけど。。相当に独特なにおいであることは間違いないと思います。


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また、皇室や軍隊が製糸場の視察に来る場面もありました。皆、口元にタオルやハンカチを当てて視察周りをしていました。軍の人は、恰好つけて口元を覆わずに視察をしたため、工場を出た瞬間に嘔吐していました。



実はわたし、この映画観るの2回目なんです。

でも、1回目に観たときは、このにおいがどんなものなのか想像がつかず、ただひたすらに気持ちの悪いにおいを想像して震えあがりました。しかし先日、蚕のさなぎを実際に食べてみて、体で理解しました。映画の画面全体からたちのぼる湯気は、茶色い蚕のさなぎを煮て、まゆを取り出している工程でした。このにおいはきっと、あのとき噛みちぎった蚕のさなぎ独特のにおい、あれのもっと凝縮されたものなのだと思いました。


「ああ、これが桑のにおいと言われるにおいか」
「これを、くさいと表現していたのか」




■桑の葉はヒトは食べられない

蚕が食べて、糸のもとを作り出す桑の葉ですが、ヒトの体はこれを食べるようにはできていないようです。化学的に、分解できない毒素があるらしいのです。

しかし、蚕の体には特殊な、その桑の成分を分解する能力があって、桑の葉を食べることができるそうなのです。

つまり、蚕のさなぎを食べることは、ふだんヒトが食べつけていないものを食べることなのです。※蚕のさなぎを食べても毒性はありません

 

もちろん、さなぎまで成長している蚕ですから、桑の葉だけでなく糸を吐き出した後の「残りの力」として身が形成されており、やがて蛾になるための成分を体の中でそれぞれに蓄えているのです。タンパク質でありながら、やや脂質もあるその味は、その成長過程における独特のものです。




ちなみに蚕のにおいだけでなく、この映画にはいくつもの見どころがあります。


仕事がつらくて逃げ出す工女。激務に耐えられず、病気になってしまう工女。工女間におけるヒエラルキー(仕事ができるかどうか)。


工女が若旦那の妻の座を狙いライバル化する。だんな衆と工女の淡い恋。痴情のもつれ。


工女を働きに出すことで食べていっている飛騨に残された家族の心情。



少し古い作品のため、かえって描写が生々しいです。工女たちは隔離された環境で仕事をしているので、糸をひいているか寝る前のおしゃべりか、年に一度のお祭りくらいしか場面転換がないのですが、その底抜けの明るさで乗り切る姿や、若い女性だけが持ちうる独特の強さにいちいち心惹かれてしまいます。


暴力的なシーンもありますが、当時としては当たり前だったのでしょう。このシーンはカットせずに映画になって良かったと思いました。

また、なぜか寝取られ描写もあります。行為そのものの描写はありませんが、行為に至るまでの経緯の描写が実にうまい。エロ映画ではないのにそのシーンはかなり興奮を誘うものでした。


愛のある性描写も少しだけありました。抱かれる直前、恋に頬を染める美しい工女はこう言いました。

「さなぎくせえ、おり(わたし)なんかでいいのか?」

彼女たちの体からどんなにおいが立ち上っていたのか、今のわたしは知る由もありませんが、機会があれば製糸場の見学に行ってみたいと思いました。そして、これからも今まで食べたことのない虫を食べて、自分なりに世の中のさまざまな「知らなくても生きていけるけど、知るとおもしろい」ことを広げていきたい、そんなふうに思いました。


蚕のさなぎを食べて、「あゝ野麦峠」を観たら、からだごと映画の世界に入れた…というお話でした。


もちろん、野麦峠を超える寒さの中の過酷な描写とか、当時の人々の生き様とかがメインの映画ですよ! 昆虫食の映画ではないのでご注意くださいませ。。


それじゃあ、また明日!


☆今日の過去記事☆

 

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