こんにちは、かんどーです。
接客業をしていると、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」を一日に何度も言います。ただ言うのもアレなので、自分が担当したお客様のお見送り時は「お気をつけてお帰りください」「またお越しください」「またお待ちしております」などの言葉をお客様に応じて付け加えています。これは、お客様の背中に向けた、わたしからのメッセージです。挨拶は大きな声で言いますが、付け加えの言葉は大きすぎない声で、お客様にだけ届くようなトーンで言っています。
やまびこあいさつ(誰かが「ありがとうございました」と言ったら重ねて自分も声を出すやつ)の場合は、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」以外の言葉は重ねないことが多いです。これは、接客を担当したのが自分ではないので、担当したスタッフさん以上に印象を残す挨拶をしたくないからです。お客様も、担当したスタッフの見送りの言葉を聞きたいはずだから。
さて、オナニーあいさつ。
これはわたしの造語なのですが、お客様に向けたあいさつではなく、自分の美声を店内に響かせるためのあいさつをする店員さんが一定数います。彼らの特徴は、「ありがとうございました」を「ぁ~りがとうっざっしたぁ~(美声)」と独特の抑揚をつけて言うこと、「いらっしゃいませ」に至っては「っしゃーせぇー(美声)」です。射精。
これらを、入口を向いてお客様に言うのではなく、自分の手元を見ながら、すごい人になると虚空を見つめ、発声することに集中して、目を閉じて発声している人もいました。もう、発声することが好きすぎちゃってる感じ。自分の声の響きに酔っている。
そのオナニストさんが面白かったので、ためしに何か買ってレジをお願いしました。レジの作業はとても手早く、おつりを渡してくれたあと、普通に「ありがとうございました」と言ってくれました。しかし、わたしが自動ドアから出るか出ないか、というタイミングで聞こえてきました。
「ぁ~りがとうっざっしたぁ~!!!」
野太く、響きがあって、よく通る声でした。演劇か何かやっているのかな。よく考えたら不思議はないですよね。役者修行中だったり、声優を目指していたり、声を仕事にしたい人がコンビニでアルバイトをしている。発声練習をかねて、あいさつの声を大きめにしている。全然悪いことではないです。お店にも活気が出ますし、お店側としても、こういう人と組んでシフトに入ったら、声出しをこの人に任せられるので、淡々とレジ打ちや品出しをしていて良くなるので、やりやすい。
今回このオナニーあいさつに気づいたのは、あいさつの言葉がどこに向かっているかをたまたま感じ取れたからなんです。わたしは、自分がお客としてお店に行ったとき、お店を出るときに聞こえてくる「ありがとうございました」がどこを向いているか、注意して聞いています。
あ、わたしに言っているなと思えるときは、振り返るとお店の方がまだこっちを見てくれている。おじぎをしてくれている場合も。オナニーあいさつの場合は、お店の方は虚空を見つめたり空を見たりしています(笑)
どっちでもいいんですけど、キャッチする人はキャッチする部分ですから、わたしはお客様に届くように言おうと思います。逆に、難癖だけを言いに来た人に対しては、その人に向けず、発声としての「ありがとうございました」で見送ります。言わなきゃ言わないでまた怒るので、とりあえず言いますが、変に遜らないように言います。
コンビニで、洋服やさんで、レストランで。たくさんの「ありがとうございました」にわたしたちは見送られています。そのあいさつには、店員さんの個性が垣間見えます。次に言われたときは、ちょっと振り返ってみてもいいかもしれません。
店員さんもお客さんも、おなじ人間。そんなふうに思って接すれば、みんな隣人。ささいなことで怒るより、楽しいことを探していきたいと思うのでした。
それじゃあ、また。