今週のお題「初めて牛丼を食べた日の思い出」
※こんなお題はありません、勝手につくりました
わたしは、21歳のころ初めて牛丼を食べました。遅いと思いますか? 18歳から一人暮らしはしていたのですが、お金が無かったのでお昼は「まかない」、夜は自分で炊いたご飯と適当なおかずで食べていたのです。
たまにする外食はマック。そんな18歳でした。
21歳になり、パン工場で働き始めました。まだまだ世の中を知らないわたしですが「じゃマール」という雑誌でメンバー募集をしていたバンドに加入して下手な歌を歌ったり、ギターの人のおち@ぽで初体験を済ませたりしていました。
おち@ぽの力は強大で、しょんべん臭いガキにわずかな色気をもたらしてくれました。工場でモテるようになったのです。(夜勤は女性がとても少なかったので、誰でもモテたと思います)
最初に付き合ったのは、新卒で入社した社員の男の子でした。19歳。わたしよりふたつ年下の「大島くん(仮名)」は、何度かデートに誘ってくれました。いきつけの中華料理屋や、がんばって原宿に連れて行ってくれたりしました。生まれて初めていく原宿は、どのお店に入っていいかわからない、何もかもがきらきらした街でした。
大島くんとの会話の中で、わたしは「牛丼が食べてみたい」と言いました。大島君は社員だったので、夜勤と昼勤の繰り返し勤務なのですが、夜勤明けで一昼夜明けて次の日が昼勤のときは、夕方までがんばって起きているのだそうです。そんなとき、早めの夕飯として大島君はいつも「牛丼の特盛」を食べるのだそうです。
そうでなくても、夜勤明けで疲れているときは特盛を食べると言っていました。吉野家は工場から歩いて20分くらいかかるし、寮と反対方向にあるのだけれど、どうしても食べたくなるのだと。茨城の奥の方から上京してきて寮に入っていた大島くん。工場では黙々と大人のように働いていましたが、まだまだ食べ盛りの若い男の子だったのですね。
さて、大島くんに連れて行ってもらった、C県M駅の駅前にある吉野家。そこは結構大型店舗でした。それまで一人で牛丼を食べたことが無いわたしは、どう注文していいのか、ものすごくキョドッていました。牛丼って、キン肉マンが食べているというイメージしかなくて、そもそも値段さえわからなかった。お水が運ばれてきた瞬間、ものすごくキョドっているわたしを見て大島君は、
「フフ、可愛いな」
なんて言ってた気がする。ぶっさいくなわたしによくあんなこと言ってくれたよ。
それで、大島君は、わたしにも特盛を頼めといいました。特盛を食べてこそ牛丼だから! みたいなことを言っていました。…初めて食べた牛丼は、特盛だったんです。
ものすごく量が多くて、正直きつかったです。牛丼ってすごい量なんだなと思いました。なんとか完食しました。われながらがんばったと思います。その後のデートでも大島君は吉野家に連れて行ってくれましたが、わたしには「大盛にしとけ」と言ってくれました。大盛でも少し苦しかったですが、大盛なら卵をつけて完食できました。
大島くんとは、その後特に何も無かったのに別れてしまいました。
わたしは無神経な女で、大島くんが喜ぶことをなにもしてあげられなかった。ただ、眠いのに絡み付いてきたり、夜勤で疲れているときに無理やり遊ぼうとするところがいやになって、合う回数を減らしました。別れは焼肉屋でしました。焼肉を目の前に、大島君は泣いていました。しばらくすると、大島君は工場をやめてしまって、彼がしていたラインには黒縁めがねの主任が入るようになりました。工場はいつだって代わりの人を用意しているんだなと思いました。
時を同じくして、華原朋美が牛丼をつゆだくにして食べているとテレビで言っていました。あれはインパクト強かったなあ…
月日が流れ、わたしの一人暮らしも堂に入ってきました。一人で富士そば、牛丼、カレー、なんでもござれ。(焼肉や焼き鳥はまだ一人では行けませんでした)
牛丼に並盛があるというのは、一人で行くようになって初めて知りました。わたしには並盛でちょうどよかったです。たまに大盛も食べたけど。あと、つゆだくはしなくていいと思った。一人暮らしをするようになってからは、牛丼だけを持ち帰って、家にある卵をかけるようになりました。その方が安くつくから。
だけど今になると、お店で食べたいっていう気持ちがすごく強い。卵が割高だということはわかっているけれど、あのカウンターで、食べたい。
あの、甘辛い味付けがしみこんだ肉とたまねぎ。
つゆだくにしなくてもつゆがしみたご飯。ご飯があまってしまうタイプのわたしは、紅しょうがでご飯をかき込む機転も大事。
わたしの牛丼流儀。
牛丼と卵運ばれてくる→卵パチャパチャ混ぜる→牛丼の真ん中にくぼみ作る→卵流しいれる→紅しょうが散らす→七味振る→端からいただきます
こんな感じで、最後まで卵と肉のバランスを崩さないように端から食べていきます。表面の肉が無くなってご飯が見えてきたら、紅しょうがでご飯をかきこむ。そんでまた肉と一緒にご飯を切り崩していくの。
至福だよね。
わたし、落ち込んだら吉野家の牛丼食べることにしてる。どんなことになっても、生きていかなきゃいけないって、からだごと前を向けるように。気持ちだけむりに明るくしようとしても、結局無理になっちゃうから。
あなたの、牛丼初体験はいつですか?
それじゃあ、また!