こんにちは、かんどーです。先日ネットでこんな記事を見つけました。
この記事を要約すると、
・著者は見た目は外国人だが日本に長く住んでいる
・頭脳労働をしており、日本人レベルで日本語が堪能
・先日、子どもを連れてディズニーランドに行った
・子どもがほしがったのでチキンを買うために20分並んだ
・店員は著者の顔を見て「外国人だ」と判断し、接客を英語に切り替えた
・接客は丁寧だったが著者は「これは日本のおもてなしではない!」と激怒
・「日本に来たのだから日本語が聞きたい」と自論を展開
こういう内容のことが書いてあった。
この著者は、論点のすりかえが絶妙。記事の中で著者は「観光客だって、せっかく日本に来たのだから日本語の響きが聞きたいはずだ、だから彼女は接客は日本語ですべきだった」と書いている。
しかし、著者が本当に怒っているのはそこではない。著者は見た目が外国人だから「この人は日本語ができないだろう」と思われて、画一化された「外国人扱い」を受けた、そのことに怒っているのだ。
ちょっと想像してほしい。
あなたはテーマパークで時給900円のアルバイトをしている。仕事にやりがいも感じており、どんなに忙しくてもお客さんに嫌な顔をせず、一人一人のお客さんの顔を見て接客したい! と考えていたとする。
その日はとても店が混んでおり、あなたのレジの前には大行列。みんな20分以上待ってやっと食べ物が買える状態。あなたは笑顔を絶やさず手元を素早く動かしながらお客さんに商品を手渡し、お礼を言っておじぎをする。そして次のお客さんの顔を見る。
とっさに英語での挨拶に切り替えて接客を行なった。そのお客さんは物静かで、その場では何も言わなかった。しかし後日、ネット上に明らかに自分とのやり取りが公開され、「あの接客はおもてなしではない」と言い切られる。そこにはたくさんの同調コメントが寄せられ、「店員は日本語を使うべき」と書かれている。
もしもあなたが、外国人のお客さんに喜んで欲しくて、頑張って英語を覚えて接客していたとしたら、どんな気持ちになるだろうか?
話をわたしの接客スタイルに移します。
外国人のお客さんが来た際わたしは、のんびりしたお店だったら、「こんにちは」と声をかけて、何と返ってくるかによって接客言語を決めます。しかし、長蛇の列ができているレジであれば、直感で英語を出すこともあります。その方が全体最適となるからです。
もちろん、こちらが英語を出したとき「日本語で大丈夫よ」と言われたらそのまま日本語に戻します。日本語で世間話を一言入れて、日本語接客に切り替えます。
著者はこの「忙しい時ゆえの画一化された英語対応」が「おもてなしとして不十分だ!」と自論を展開しているのですが、あまりに心が狭いなぁ…と思いました。
毎日接客業をしている人がどんな気持ちなのか、少し察してみることもできなかったのかなぁと、残念な気持ちになります。
わたし自身、海外で買い物をすることがよくあります。英語でも買い物くらいなら何とかなるし英語を使いたい気持ちになります。
でも、相手が日本語を話してくれた場合は、日本語接客を受けます。だって、商品を売るために難しい日本語をここまで覚えてくれた、そのことに感動するからです。あるタイ人のデパートスタッフに、なんでそんなに日本語が上手なの? とたずねたら、
「ワタシは、日本語と中国語を勉強しています。ワタシが話せたらいっぱい売れるからです(笑)」
と言っていました。はっきりしてますよね! その方は当たり前ですが英語はペラペラです。
彼女のあくなき向上心はキラキラと輝いていました。それを無下にして「わたしはタイ語が少しわかるからタイ語で接客してください」という気持ちにはなりませんでした。
サービス業の現場は時給で働いていることがほとんどです。時給900円で立ちっぱなしで働きながら、それでも目の前に現れるお客さんが困らないようにと、眠い目をこすりながら英語を覚えた努力に想像が至らないものでしょうか?
もちろん、英語で接客されるのが嫌だったら、その場で言えばいいのです。
「日本語で大丈夫よ!」
と。
そもそも接客業をしている人であれば、相手がそう言えば日本語に切り替えます。それで笑って商品を受け取って、それでいいじゃないですか。
著者の方は、記事のネタにしたかったから、そうせずにモヤモヤを自宅まで持ち帰ったのでしょうか。もしそうなら悲しすぎます。
とりあえず、テーマパークとか書いてるけどディズニーランドだって丸わかりだし、あそこで働いてる人はめちゃくちゃモチベーション高い人ばかりなので、あんまり重箱の隅をつつかないで欲しいです。彼女たちの努力がムダになったような気がして悲しくなります。
彼女たちは、お客さんが不便のないようにと英語を学んでいます。日本の英語教育は世界に遅れをとっており、個人で勉強をしないとスムーズに英語は話せないのです。
著者がビジネスの根城にしている日本が衰退することをお望みでなければ、もう少しサービスの現場に優しい記事を書いてほしいです。声の大きい人の意見は通りやすいんです。わたしの弱小ブログと違って、著者の文章は日本中の人が読むんです。
「なーんだ、せっかく週1で英会話通ってたけど、おもてなしで日本語使えとか思われるんなら、勉強やめよ、ばかばかしいや」
こんなことを思うサービススタッフが一人でも生まれることが、わたしは恐ろしい。
サービスは与える側だけのものではありません。受け手とのコミュニケーションがサービスです。おかしいなと思ったらその場で言う、それだけでいいんです。その場で解消しちゃってください。
以上、現役接客業スタッフからのお願いでした。
それじゃあ、また明日!