接客業は卒業したよ! あけすけビッチかんどー日記!

接客業歴15年のかんどーが綴る、あけすけな日記。人生はチキンレースです。一歩引いた方が負け。たまに小説を書きます。お問い合わせはsaori0118ai2あっとまーくやふーめーるまで。

【 短編小説】亀が蟹にキスをした(18禁)

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クリスマス特集 恋愛小説(亀と蟹編)

 

 

 海の浅瀬の砂浜に、甲羅を持った亀と蟹が住んでいた。二匹は外敵から身を守るため、二匹でもってそこへ住んでいた。最初こそ岩陰のようなところへ適当に住んでいたが、身の危険を回避するために岩陰へ加工をしたり、太陽光の当たり方を考えたりしているうち、砂浜に深き穴を掘ってそこへ住まうようになった。
 

 蟹はほかの生き物よりも深く広い穴をつくった。亀は蟹がつくった穴の入り口がとても目立つことを知っていたので、穴の入り口がわからないように貝殻でふさいだり、目くらましのために近くにたくさんの穴をあけて外敵の攻撃を防いだ。

 

 遠浅の日中、人間たちが潮干狩りへやってきた。彼らの中には、深く深く穴を掘るものもいた。そんなとき、亀はさらに奥深くへと穴を掘り進めた。亀はときどき呼吸しないと苦しくなるのだが、蟹を守るためにたくさん息を吸い込み、自分の甲羅を盾にして蟹を守った。亀は一度人間に捕獲されかけたことがあるので、もうあんな思いはしたくないと思い、必死で自分の身、そして蟹を守った。

 

 海水が深くなる日は、人間たちがやってこない。蟹はこういう日を狙って、亀を砂浜へと誘った。ふだん甲羅の中に隠されている亀の気持ちの良いところをマッサージしてあげるためだ。蟹は身体のすべてをつかって亀を気持ちよくした。亀は日頃の息苦しい浅瀬の日や、外敵のストレスを忘れ、蟹との戯れに夢中になった。

 

 やがて亀は、マッサージの後に蟹を抱きしめるようになった。ずっと同じ穴に住んでいると言っても、穴の中は縦に長くなっており、思うようにマッサージができない。蟹を抱きしめることもできない。だから海水の深くなる日に、二人で海をたゆたったり、砂浜で互いの体に触れあって愛を確かめ合った。

 

 そのうち、蟹は亀に対する奇妙な感情に気づいた。亀にするマッサージを少し強くする。亀にするキスの甘噛みを少し強くする。亀が痛がる姿を見ていると、蟹はどうしようもなく欲情した。蟹は、性的異常者であった。

 

 亀はいたってノーマルであったので、それまで蟹がしてくれた普通のマッサージと、普通のキスが恋しかった。互いの関係に主従関係を持ち込まれることに違和感を感じていた。亀は蟹との戯れを拒むようになっていった。

 

 蟹は、亀と出会ったときより一回り体が大きくなっていた。そして左側のはさみだけが大きく肥大し、外敵から身を守りやすくなっていった。左側のはさみをかざせば、大抵の外敵は恐れをなして去っていく。蟹は穴に入る際、亀に自分より奥へ入って眠るようにいった。それまでは亀の方が強かったのだが、今は蟹の方が強いからだ。

 

 

 ある海水の深い夜、蟹は思い切って亀のお尻の穴に細い指先を挿入した。つぷつぷと入り込む指の感触が蟹の情欲をかきたて、蟹は亀のお尻の穴を使うことだけを考えていた。しかし亀は、「そこだけは、ダメ」と許さなかった。

 

 蟹は激昂した。元々亀の庇護下にあった蟹であったから、亀の言うことはたいてい聞いてきた。しかし、蟹の情欲が右肩上がりであるのに対し、亀はちっとも情欲に左右されないたちであった。蟹は「亀と気持ちのいいことができないのなら、もう亀が生きている意味なんて無い」と思い詰め、大きく肥大した左のハサミで亀の尻尾を切り落とした。次に亀の左足、右足、左手、右手を切り落とし、最後に亀の頭を切り落とした。

 

 そこまでやってから、蟹はおもむろに亀の尻の穴に指をぜんぶ入れて抜き差しをした。そのあと、亀の尻の穴をハサミでチョキン、チョキンと切り開き、その内面の粘膜をくまなく観察した。

 

 蟹も亀も、心を持たない畜生道の生き物である。これはなんということのない、ただの畜生道におけるよくある一幕である。

 

 ……しかし、亀は最後の頭を切り落とされる瞬間にこう、思っていた。

 

「どうか、次に生まれ変わるときは心と心を通わせられる生き物になりたいです」

 

 亀は、心の中で蟹に、触れるだけのキスをした。心から蟹を愛しく思ったあの日々だけを思い出した。身を切られながらも、亀の心は一途であり、そしておだやかだった。

 

 

 打ち捨てられた手足と尻尾と頭のない亀は、甲羅から何も出ていないただの甲羅としてずっとそこにあり、やがて大きな波が来た際、はるか海の彼方へ流されていった。

 蟹はもう亀のことなど頭になかった。ただ、次に一緒に住まう生物を探して、肥大したハサミの手入れをしつつ、時折性器を岩場にこすりつけて、自らの情欲を満たすのであった。