接客業は卒業したよ! あけすけビッチかんどー日記!

接客業歴15年のかんどーが綴る、あけすけな日記。人生はチキンレースです。一歩引いた方が負け。たまに小説を書きます。お問い合わせはsaori0118ai2あっとまーくやふーめーるまで。

接客業に殺されそうになって、今がある話

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先日、こんな記事を書きました。

 

www.kandosaori.com

 

 

この記事に対し、ある人は実際にお会いしたときに、ある人はメールで意見をくれました。わたしと同じくショップで働く方や、実際に(大臣ではありませんがw)キャリアで仕事をしている方などです。

 

 

たぶんわたしは、このお客様の事例を共有したくてこの記事を書いたのではない、と書きながら気づきました。わたしは、自分の人生が何割か、接客によって失われたことに対して、めちゃくちゃに怒っているのです。

 

日本の接客業には、異常な時期がありました。

 

しまむら土下座事件、携帯ショップ  外食と検索していただければ、その異常さがわかると思います。店員が奴隷扱いされている状況が実際にあったのです。一応リンクも貼っておきます。この店員さんたち絶対トラウマになってると思う。

 

しまむら店員土下座事件 - Yourpedia

 

togetter.com

 

 

 この時期はほんとうに、きつかった。世の中がおかしかった。

 

わたしもこの時期に、身に覚えのないクレームを名指しでもらったことがありました。「かんどうを、電話に出せ!」と言われたそうです。しかしその場所では派遣は電話に出られなかったので、社員の方が電話で謝罪をして、わたしに対し指導を行ったわけですが、いや、指導の内容がまったく事実に即しておらず、何を反省したものか悩みました。

 

電話口でそのお客は「客にタメ口を聞いた」「押し売りがひどい」「商品知識がない」と言ったそうですが、販売員なので押し売りのご指摘はたまにうけます。これは誰もが一度は受けると思いますし、そう言われたら改めます、すみませんと謝罪します。

 

しかし、電話でそのお客は、まず「言葉遣い」を指摘してきたとのこと。わたしは言葉遣いだけは、どんなに親しくなっても崩しません。お客様からどんなに崩してと言われても、丁寧語までしか崩しません。ですのでこの指摘は「ありえない」指摘なのです。

 

たぶん、みんな同じ髪型(黒髪、肩についたらまとめることが義務付けられていました)なので間違えたか、あるいは難癖だと思います。最終的にレジで買った商品について値引きを求められたそうですが、派遣はレジを打てないのでその履歴も残っていないですし、そもそもわたしは光回線スタッフでしたので、商品案内は、求められれば行うこともありますが、メインの仕事ではないのです。

 

それでも謝罪文を書かねばならず、インターネットで「謝罪文」を検索して、印刷して提出。(もちろん手書きなどしません。字が汚いからこれで、と判をついて現場と派遣会社に提出)

 

そのほかにも、毎日のように怒鳴る人が訪れ、自分が悪くなくても謝ることが当然のようになっている現場がありました。

 

決定的だったのは、物を投げつけられた時でした。待ち時間が長いことにキレて、手に持っていたものすべてをわたしに投げつけてきたのです。

 

それでも警察を呼ぶことはせず、謝罪している現場を見て、わたしは自分がおかしいのか、世の中がおかしいのか、ただただ考えていました。

 

そのうち、人に話しかけられるのが怖くなってしまいました。接客業なのに、人が近くに来ると、また何か難癖をつけられるのではないか、この人は敵なのではないか、と恐ろしくなってしまうのです。

 

販売実績は目に見えて落ちました。当時は派遣会社に登録して働いていたので、実績が落ちれば容赦なくクビ。

 

それでもクビにならなかったのは、一連の流れを知っている当時の仲間が、一生懸命接客、販売をして、最後に販売担当者としてわたしを紹介してくれて、わたしが販売したことにしてくれていたのです。

 

毎日ゼロでは、わたしがクビになってしまう。だから今は助ける。大丈夫になったらまた助け合おう、そんなことを言いながら、その人はわたしの分まで接客をしてくれました。その状態が1週間続いたとき、わたしは思い切って、精神科の先生に相談しました。

 

 

「どんなに嫌なことがあっても、感情が揺るがない薬をください。わたしは仕事に負けたくありません」

 

 

その先生は、わたしの発達障害を診断してくれた先生ですので、わたしの症状をよく知っています。先生は本当は、わたしに接客業をやめるように言ってきました。あとは、休め、とも言われました。でも、今休むことを選んだら、わたしは稼ぎ続けられない。わたしはお金を稼ぐことが自身のアイデンティティであるため、どうしても今の時給を手放したくない、そう言った気がします。

 

先生は、黙って手元の紙にサラサラと何かを書きました。そして言いました。

 

「薬飲んで仕事することを勧めているわけじゃないぞ。だけど、君は負けず嫌いだからな。負けたくないんだろ? おまじない程度の薬を出しておくから。でも効き目強いからな! 車の運転はダメだぞ!」

 

……この日から、わたしは接客で嫌なことがあったら薬を飲むようにしました。嫌なことがあり過ぎて、薬の量が間に合わず、どんどん飲んでしまい現場で記憶を失ったこともありました。(倒れたのは2回だけです)

 

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そして、今でも現場に薬を持っていかないと不安です。嫌なことがあったらどうしよう。もしも今日、耐えられなかったらどうしようと毎日思っているんです。もう7年以上、こんな状態のまま仕事を続けています。

 

 

あの、接客業が一番つらい時期を経験してしまったわたしは、もう、元には戻りません。たくさんのモンスターに、心を壊され、今はやっと人間の姿を保っている、ただの肉の塊です。こんな自分になってしまうとは、若い頃は思いもしませんでした。

 

 

生活に必要なお金を稼ぐことは、こんなにも大変なのですね。ほかの業種も、きっと大変なのですよね。わたしはほかの業種を知らないので、わからないのです。

 

 

 

20代前半で、素晴らしい接客をする方を何人も知っています。わたしはもうすぐ40になるのに、薬を飲みながら、イライラする気持ちを必死でおさえて接客業をしている。こんなことに意味があるのか? いつも自問自答しています。でも、思うのです。

 

「薬を飲まずに仕事ができているあなたはすごい!」

 

と。

 

だからわたしは社内で、接客の調子が悪いと嘆くスタッフに「あなたはこの仕事、向いているよ。調子はきっと上向くから、マイペースでやったらいいよ!」と声をかけます。 わたしほど向いていない人間がやってもできるのだから、あなたなんて調子を取り戻したら秒速でわたしを超えていくよ……と思っています。

 

 

わたしは、接客業に殺されかけています。人がこわい。人と話すのがこわい。偉そうな人間がこわい。人間がこわい。人間って怒らせるとこわい。

 

これがトラウマになってしまい、プライベートで少しでもおかしな行動をしている人が近づいてくるとすぐに警察を呼んでしまいます。目の前の人に殺されると常に思っています。殺されない保障がないので不安で仕方がないのです。

 

わたしはもう、薬を飲む生活から逃れられないかもしれません。これを情けないと思う人がいるかもしれない。でも、そうしないと、次に自動ドアが開いて入ってきたお客が怒鳴る人だったときにわたしの精神はすべてを閉ざしてしまう。だから、麻酔のように心を麻痺させる薬を飲んで仕事をする必要がある。

 

幸い先生の処方は超的確で、わたしの「素」の部分までは侵食してこない。人が怖いとか、トラウマにおびえる心だけを麻痺させてくれて、周りの人との会話では普通に笑える。寝不足だと眠くて仕方が無いので、仕事の前の日はとても早く寝るようにしている。8時間眠れば、この薬を飲んでも眠くならないと知っているから。

 

 

わたしは、接客業をしていなかったら、どんな人生だったんだろうな。

 

向いていない仕事をずっと続けている、わたし。世間はわたしを馬鹿だと罵るかもしれない。けれど、わたしは今日もお金を稼いで自分の生活を支えている。そのことにだけは小さなプライドを持っているのだ。

 

あと10年頑張ったら、大きな犬と大きな亀を飼って、リタイヤするかもしれない。そういう選択肢を自分に残している。

 

あと10年頑張れば、もう接客業を卒業できる。そう考えると、あと少し頑張れそうな気がする。

 

 

わたしは、どこか間違っているのだろうか。それとも、世の中の人はみんなこんなふうにいろいろ我慢しながら仕事をしているのだろうか。

 

わたしには、すべてがわからない。