思い出ばかりが美しくきらめくような気がします。
思い出はいつだって最高に美しいです。
私が今いちばん恋しい風景は、フィリピンのあの小さなアパートの1室です。
あのアパートのエントランスを通り、少し暗い階段をのぼり、2階にある自分の部屋に入る。2段ベッドがある。上の段には屋台で使う食材がたくさん置いてある。
そうだ、わたしはあの時、フィリピン・セブ島でたこ焼きの屋台をやっていた。
そして深夜に屋台村が終わって帰宅し、部屋のあかりをつけると心が落ち着いた。
帰宅してから食べていたのはなんだっただろうか。
屋台で残ったキャベツをしょうゆで炒めた「キャベツ炒め」だった気がする。ベーコンが余った日はそれも入れていた。
小さな1人用のテーブルにチェックのクロスを敷いて、その上にまだ温かい持ち帰り容器をのせ、キャベツを食べた。
その小さなテーブルではパソコンを使うことも多かった。
ブログもそのテーブルで更新していた。心もとないwi-fiしかなかったけれど。
今の生活よりずっとつつましい暮らしだし、不便だった。
だけど心は今よりずっと自由だった気がする。
わたしは今、ものすごくあの部屋に帰りたい。家賃は月1万3千円ほど。戻れるなら戻りたい。あの場所に。あの部屋に。
今持っているものをすべて手放してもいいから、あの部屋に帰りたい。
この願いがかなう日は来るだろうか。
きっと少し先になる気がする。
けれど、そのチャンスが来たらまた帰ろう、あの部屋に。
ドトールがなくても大丈夫。
セブ島にいれば。