鈍色(にびいろ)。
なんて甘美な言葉でしょう。どんな色を想像しますか? わたしが想像するのは、磨かれる前のなめらかな石の色と、殴られた口元で乾いた血の色。ねずみ色とあずき色の混ざったような色。そんな色が、頭に浮かびます。実際どんな色なのかは知りませんが、そんなふうに想像を膨らませていればよいのだと思います。
わたしは地下アイドルが好きです。他の人が書かないようなことを書いているブログが好きです。日本であまり食べる人のいない昆虫食が好きです。
それは、どこかそれが「自分にとっての特別」であり、さらにそれがまだ自身の光に気づいていない、儚さや脆さがあるからです。いつお客がいなくなるかわからない地下アイドルの必死さ。たくさんの読者に向けてではなく自分と向き合いながら血の糸を紡ぐようなブログ。気持ちが悪いと言われる昆虫食。
みんな、鈍く光っているんです。
でも、みんなすぐ、どっか行っちゃうんですよ。地下アイドルは有名になったら地下のことなんてただの苦労話に変えて笑い飛ばすし、ブログもよく読まれるようになるとコツを得たようにするすると書き滑らせる。それらの輝きのほうが、鈍い輝きより強いことはわかっているけれど、素直にそれを受け入れたくない。昆虫食だって、本音を言うとわたしが死ぬまでポピュラーにならないでほしい。
独占欲が強いです。地下アイドルに認知してもらうのがうれしいです。まだたくさんの人が見つけていないブログにコメント入れるのがうれしいです。そのままでいてほしいんです。でも、なかなかそうならない。やめていくか、メジャーになっていく。
わたしはそのたびにイライラして、自身の独占欲の強さに頭をかきむしる思いです。
わたし自身はどうかって?
わたしも、鈍い光を放ちたいな。キラキラしたのは苦手だから。じめっとした文章の中から時代を感じる風をひゅうっと吹かせて、読んだ人の心を一瞬だけざわつかせるような、そんな文章が書きたい。
メジャーになんてならなくていい。
ずっと小さな光をわたしだけに見せてくれればいいのに。